まず年金を受け取る方ですが、インフレが来た場合は、物価スライドという仕組みがあったので、物価上昇率に対しても、年金支給はその分上乗せされていました。

 ですので、インフレに対して年金は安心でした。ちなみに個人事業主は国民年金と国民年金基金の2本立ての年金ですが、この物価スライドは国民年金だけで、国民年金基金には適用されませんでした。インフレの分はそのまま目減りしていきます。サラリーマンは国民年金と厚生年金の2本立てですが、どちらも物価スライドは適応されてました。

 しかし、2004年に年金改正法でこの物価スライドはなくなり、その代わりにマクロ経済スライドという仕組みを適用するようになりました。このマクロ経済スライドとは、その物価上昇率から0.9%のスライド調整率を引いた数値を年金支給額に掛けることです。

 年金財源が不足していますので、その不足分を補うために、スライド調整をして支給額を0.9%分、少し減らそうということです。

 たった0.9%と思われるかもしれませんが、これは結構あります。それは、年金は長期間受け取るからです。例えば、年金を20年間受け取るとしたとき、1年目は300万円年金が支給されたとします。物価上昇率年2%が20年間続いたとしますと(複利計算) 

・20年目の年金支給額(年) 
   以前まで…445万円
   0.9%減…373万円   差額72万円

・20年間の合計年金支給額
   以前まで…7434万円
   0.9%減…6742万円   差額692万円

 これだけの差が発生します。しかもこのマクロ経済スライド0.9%の数値はその時の情勢によって政府が変更してくる可能性があります。

 そして、年金を納める方ですが、インフレが来ますと今まで納め積み立てていた年金は目減りすることになります。お金の価値が低下していきますので、年金を納めた意味がなくなってしまう可能性があります。

  しかも、インフレが進行すればするほど、月々の年金を納める金額を政府が増額してくる可能性がありますので負担増大の可能性もあります。